Feb 29, 2020

新型コロナウイルスにHIVウイルスと類似したタンパク質、と主張するプレプリントが2日で取り下げ

ネットで見つけた刺激的記事と、その検証記事を書き留めておきます。
私の素人コメントも加えています。そのようなものとして読んでください。

欧州のウイルス専門家、新型コロナウイルスに「消すことのできない人工的痕跡」 (02/09)

https://www.epochtimes.jp/2020/02/51700.html

様々な事情で正確さが失われている可能性もありそう、というつもりで読む分には、分かりやすく勉強になる箇所もある。専門的な海外記事は、本人の弁~記者の理解度~編集の都合~翻訳の精度などで、元々のクォリティが変わってしまう事が起こりうるから。

『ウイルスの遺伝子組み換えによって新しいウイルスを生成したことは、「実験室で新しい非自然のリスクを作り出した」と警告しました』、これはごもっとも。
『SARSワクチンも遺伝子組み換え技術によって作り出された』のは、えっそうなの? Wikipediaには踏み込んだ記載は無い。『人間に安全性・有効性が確認されたワクチンは無い。2002~2003で終息』という程度。
『新型コロナウイルスの毒性が非常に強い』は、インタビュー時点2/9に分かっていた統計情報からは不適切だろう。

重症急性呼吸器症候群

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E7%97%87%E6%80%A5%E6%80%A7%E5%91%BC%E5%90%B8%E5%99%A8%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4#%E6%B2%BB%E7%99%82
SARS 2002発生~2003終息の経過、ワクチン状況など確認できる。
予防策など、COVID-19と良く似ていて参考になる。
SARS-CoV-2なのだし、当然と言えば当然か。

新型コロナウイルスにHIVウイルスと不自然に類似したタンパク質が含まれている、と主張するプレプリントがbioRxivに掲載されるも、2日で取り下げ (02/04)

https://current.ndl.go.jp/node/40153
以下、引用箇所 字下げ
「自然界で偶然、起こるとは考えにくい」と主張していました。しかしこの論文に対しては多くの研究者等から手法や結果の解釈について批判のコメントが寄せられ、週末中の2月2日に著者ら自身によって取り下げられました

bioRxivには現在非常に多くの新型コロナウイルスに関するプレプリントが投稿されているものの、それらは査読を受けていない段階にあるものであって、なんらかの結論が出たものと解釈したり、臨床実践等に用いたり、ニュースメディア等で取り上げるべきではない、という注意喚起が表示されるようになっています。

Uncanny similarity of unique inserts in the 2019-nCoV spike protein to HIV-1 gp120 and Gag. Prashant Pradhan et al. bioRxiv 2020.01.30.927871; doi: 

https://doi.org/10.1101/2020.01.30.927871
withdrawn されてますね (02/29)

撤回情報のページ

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.01.30.927871v2
こちらもwithdrawn されてますね (02/29)

これがスパイク・タンパク質にある4つの重要なアミノ酸残基? この記事を見たら要注意。

原文(の旧バージョン)はこれ(↓)か?
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.01.30.927871v1.full.pdf

Quick retraction of a faulty coronavirus paper was a good moment for science(02/03)

https://www.statnews.com/2020/02/03/retraction-faulty-coronavirus-paper-good-moment-for-science/
新しいコロナウイルス2019-nCoVに対する恐怖が先週金曜日に広がり続け、科学者が吟味されていない仕事を投稿するプレプリントサーバーbioRxivに炎症性の新しい論文が登場しました。

タイトルで「不気味=Uncanny」という言葉を使用し、要約で「偶然ではない」と考えたため、著者はウイルスが何らかの形で人間によって操作されたと示唆していると考える人がいました。

ビジネスモデルをひっくり返す可能性のあるプレプリントサーバーを採用するのもよい考えです。

プレプリントサーバ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%90
プレプリントの仕組みは良い点もたくさんあるようだが、掲載論文は査読が終わってないのだから、読む方に慎重な態度が求められる、ということ。

【注意】「新型コロナウイルスにHIVタンパク質が挿入」というインド論文の信憑性 (02/02)

https://www.jijitsu.net/entry/coronavirus-HIV-2019-nCoV

これ、実は文献まだ読んでないのですが、海外の尊敬する専門家が「あれはないわ」と言っていたので、読む気がなくなりました(笑)
— インヴェスドクター (@Invesdoctor) 2020年2月1日
日本語で運営されている"InDeep"という陰謀論サイトでもこの論文が扱われていることが確認できます。
ちなみに英語版Wikipediaでデイリーメール紙は引用禁止になっている。デマ新聞と見做されて。 https://t.co/6XWIw3FbGe
— JSF (@rockfish31) 2020年1月28日

「中国の武漢にSARSやエボラの研究施設を建設」という記事など、これまでに「生物兵器」 関連の陰謀論がささやかれていたために今回の論文を見て「やっぱりそうだったんだ」と考える人が居ます。
しかし、そもそもそのような内容の記事を出している所は英紙デイリーメールなど、日本で言えば「東京オリンピック中止」というタイトル詐欺をした"Buzzup!"や「なソゲ(なお、ソースはゲンダイ)」と揶揄されている日刊現代、リテラなどのフェイクサイトの類のメディアが出どころであったに過ぎません。

まとめ:HIVタンパク質が「人為的に」挿入された事を直ちには意味しない
  1. 問題の論文は「予稿」であり、査読されておらず科学的に正しいことの担保が取れていない
  2. 論文にはHIVウイルスのタンパク質が人為的に挿入されたとは直接的には書いていない(匂わせる記述は考察部分であり、事実を指し示すものではない)
  3. HIVタンパク質に「似たもの」という表現
  4. 悪質なサイト・陰謀論サイトが引用し、論文に書かれていない意味を付加して拡散している
  5. 論文に書いてあることが正しいとしても「人為的に挿入」された事を直ちには意味しないし、HIVウイルスと似てるに過ぎずHIVウイルスそのものであると直ちには意味しない

新型コロナウイルス(2019-nCoV)の表面スパイクにHIV類似の配列があるという論文に対する反応 (02/02)

https://togetter.com/li/1463472


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